沼底その2

ちまちまねんどろいどを愛でるブログ

映画『日本刀』観てきました

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このほど自宅近く(でも遠い)の映画館でも上映開始と相成りまして、勇んで見に行ってまいりました。

www.toukenmovie.jp


細かい感想は後にして、一言。
鑑賞時間足りないです円盤化してください……!!

以下ネタバレ感想ですご注意のこと。

上映時間は1時間。映画としては短く感じますが、濃い1時間でした。

映画の構成は様々な名刀自体の鑑賞とその刀の来歴と、現代の刀匠や研師の仕事、タタラ吹きの様子などを交互に紹介していくというもの。

ひとまず刀側の感想から。

全部で24振り、それに現代の刀匠の作品もあったので合わせると26振り? の中から印象に残ったものを簡単に。

刀剣側トップを切ったのは明石国行。
すでに映画を見た友人から「綺麗だったよ」と教えてもらってましたが、いやほんとに「綺麗」という言葉が似合う刀でした。
撮影方法の違いからでしょうか。
太刀〈銘国行/〉 文化遺産オンライン
とはまた全然印象が違いました。もちろん香川で見たのとも。あえて言えば薬師寺で見たのに一番印象が近いかな……。
ほんともう、国行と名のつく刀はどれも見る度印象が違いすぎですがな。

ついで童子切安綱。
真鍮のように少し黄色っぽい刀身が印象的。タタラ吹きという製鉄方法自体は平安時代には確立してたみたいだから、製鉄方法がほかと極端に違うわけじゃないと思うんですよね。材料にした砂鉄に何かあったのかなあとかそういうこと考えるとワクワクします。
形の印象はやはり北野天満宮で見た鬼切丸とよく似ていました。茎の方は安定した幅、先端の方がある場所からすっと細くなるあの形状は馬上で抜く時の抜き方が見えるようでかっこいいです。というか太刀見る度に馬上での抜刀を想像してニヨニヨします。

そうそう馬上といえば! 薬師寺「噂の刀」展で「見たい!」と言っていた直刀の映像もありました!
これはこれで美しかったです。というか美しいことに驚きました。なんか似たようなこと繰り返し行ってますが戦年以上前の刃物なのに今すぐ使えそうな輝き具合でした。
あとは国内の湾刀が見られれば……!

それから徳川家康が好んだという大和守源秀国と、逆に徳川が忌避した村正。
これを続けて見せてくれるのがいいですねにくいです。
大和守源秀国の方は無骨というかシンプルというか、なのに対して、村正は気のせいかどっか怪しげに揺蕩うような刃文。薬師寺で村正特集観た時にもちらっと感じたことでしたがこの映画でもその印象は覆らず。たぶんこれが特徴と思っていいのだろうなあ。

さてここで少し飛んで三日月宗近
映画とはいえこれを見せてくれるのか! というのにまず感動。
三日月宗近の場面ではナレーターを務める鳥海さんが三日月風にしゃべってくれまして。ちょっと自己紹介っぽくてニヨニヨしました。
そして三日月に見える打除けというやつですが……分からなかったですよ……。時間短すぎですもっと見せて欲しい。

次が姫鶴一文字。
エピソードのせいでかわいらしいイメージがどうしてもするんですが、本人?いや本刀はやはりどこまでも実用のための刃感にあふれてました。


さてへし切り長谷部と宗三、ではなく義元左文字。
時代劇にはほんと暗い人間なのですが、宗三左文字より義元左文字の方が時代劇方面の人には馴染みが深いみたいですね……?
さてその義元左文字といえば、歴代の天下人に求められただけあってどこまでも美しい刀でした。茎の文字のエピソードも面白かったです。ほんと子供のようですよね、信長。
そしてへし切り長谷部。皆焼なる焼き方?を見るぞ! と意気込んでたんですが……わからないいいい。ほんっと分かりませんでした。
リアルに皆焼な刀が見られるところを探すかな……。

続いて一期一振。
こういう言い方はおかしいかもしれないんですが、実直に美しい刀だなあと思いました。

あとは……うーん、やっぱり後半の方になると記憶がアウトだなあ。
景光が敵味方両方にあったのとか面白かったんですが。
やっぱり見る目がないからエピソードにばっかり気を取られちゃうんですよねえ。

職人側の感想

さてここからは映画に登場した現代の刀工や研師の方々について

タタラ吹き

これは動画見てみたかった。見れて満足です。
日立金属>たたらの話>砂鉄
上のリンクに詳しいんですが、この製鉄方法が成立したのって日本という土地の土壌があってのことなんですねえ。
あ、このページ、タタラについてもわかりやすくておすすめです。
日立金属>たたらの話
これは映画には出てこなかった話なんですが、ふつう製鉄っていうのは不純物を嫌うのに和鋼ではむしろそれを利用しているようです。不純物が刀に求められる粘りの元になっていると。そういうの面白いですね。

作刀

出来上がった玉鋼から実際に刀の形に打ち上げる工程。こちらも月山派の刀工の方の実際の仕事ぶりを見せて頂けました。初期の工程がやたらと儀式めいていたのが印象的。
で、鍛刀自体について。
鍛刀は備前長船刀剣博物館でも見学したことがあるのですが、どうも私が見に行った時のメインの人?はまだまだ新米さんだったようでだいぶ手つきがおぼつかなかったんですよね。その人には申し訳ないけどどうしても脳内で比較しちゃって、「なるほどあの人はこうしたかったのか」と思う場面が多々ありました。
そういえばあの折り返しのいち工程で、何度か刀匠が斜めに鎚を入れてらっしゃいました。もしかしてあれが月山派の特徴だという綾目肌を作ってるのかなあとか妄想してニヨニヨしてました。

研磨

個人的に一番内容に惹きつけられたのがこちら。

映画ではサビが来てしまった刀を研ぎなおしておられました。
研ぎを依頼されたらまず1週間ほどその刀と向き合ってどう研ぐか考えるそうです。
刀の研ぎというのは「研ぎすぎてはいけない」ものなのだとか。そのために手順をよく考えるってことですね。

そして研ぎ。
最初は粗めの砥石で、(たぶん)全体のサビ落とし。ぐっと力を入れて擦り付ける最初の研ぎにぞくぞくしました。
この後もそうなんですが、刀の腹?半ば辺りを砥石に当てて、両端に置いた手でぐっと研ぎ始めるんですよ。そうするとクリーム色の砥石に刀のサビが削られて鉄錆色の線がすっと描かれるんです。あの「仕事始めだ!」感がほんとたまりません。
次に中間ぐらいの砥石でしっかりと土台を作っていく。ここが一番大事、という言葉になるほどなあと思いました。個人的に、ですが、この中間の研ぎが一番精神的にクる工程だと思います。先が見えなくて。
最後に仕上げの研ぎ。仕上げはほんとに繊細で、「名人でなきゃ出来ないよ」という工程が多くて。
例えば刃文を守るための研ぎ。1mm以下に削った砥石の破片を指先で刀に押し付けて研ぐんですが、これもうすごすぎですよ。たしかに刃文を綺麗に研ぎ出すにはいい方法だろうけど、でも均一に力をかけないとでこぼこになっちゃうじゃないですか。それを指先の感覚だけで制御しながら研ぐってとんでもないです。

あと全工程とおして印象に残ったのは、砥石を変えるたびに必ず綺麗な水に取り替えていることでした。どのくらいのタイミングで水を変えているのかわからないんですが、水を替えて水分をよく含ませた砥石を取り出した辺りで次の工程へ気持ちが切り替わるのかもしれないですね。
それとこまめに砥石自体に砥石を掛けて平面を維持している所もですね! 平面大事ですよね、平面。

総評?

ひとまず。たった1時間とは思えない濃い内容でした! 面白かった!
刀の場面では一時停止したいことが多くて多くて……!

ただ見に行った日の関係か、観客が自分しかいなかったのは結構キました……。後からもう一人入ってらした方がいたんですが、その人多分劇場のスタッフさんなんですよ。出た後まっすぐに劇場関係者の部屋へ歩いてったし。劇場スタッフさんが見てたってそれはそれでほっこりするけど、たとするとほんとに純粋な客は自分一人というわけで。いやあ、まあ、うん。

なお、最後のクラウドファンディングに参加(っていう言い方でいいのかな?)された方一覧にないなさん(id:poponainai)のお名前を拝見してなんか感動しました。素敵な映画を見せてくださってありがとうございます。